一度の観察は、植物の生活の一場面です。同じ場所を繰り返し訪れると、芽吹き、開花、結実、落葉、休眠の時期と、周囲の生物との関係が見えてきます。
この章で学ぶこと
- 季節的な生物現象を記録すること
- 訪花、食害、共生などを観察する方法
- 同時に見られたことと、因果関係を分けること
生物季節を記録する
発芽、展葉、開花、紅葉、落葉など、季節に応じた生物の現象を観察することをフェノロジーの観察といいます。初めて花を見た日だけでなく、つぼみ、開花の最盛期、花の終わり、果実の成熟を段階で記録します。
毎年同じ個体や場所を観察すると、年による違いも見られます。観察間隔が空いた場合、「初開花日」と断定せず、「初めて確認した日」と記録します。
花を訪れる生物を見る
花には、花粉や蜜を利用する昆虫や鳥などが訪れます。訪れたことと、受粉に寄与したことは同じではありません。体のどこに花粉が付くか、別の花へ移動するか、花のどの部分へ触れるかを観察します。
時間帯、天候、花の開閉、香りの変化も記録すると、訪花との関係を考えられます。
食べられた跡も関係の記録である
葉の穴、巻かれた葉、虫こぶ、潜った跡、果実の食痕などは、植物と他の生物の関係を示します。傷んだ部分だけを見ず、どの葉齢に多いか、株全体の成長へどの程度影響しているかを見ます。
食害があることは、植物がただ弱っているという意味ではありません。野外の植物は、食べる生物を含む関係の中で生活しています。
地下と目に見えない関係を想像する
根は、菌類や細菌などと関係を持ちます。植物の根と菌類がつくる共生的な構造は菌根と呼ばれ、植物による水や無機養分の利用にも関係します。地上から直接確認できないため、形だけで特定の共生を断定することはできません。しかし、落ち葉の層、土壌、周囲の植生を記録することで、その植物が単独ではないことを意識できます。
同時発生と原因を分ける
ある昆虫が来た日に花が閉じたとしても、昆虫が原因とは限りません。時間帯や天候が両方に影響した可能性があります。複数回観察し、比較できる条件を残します。
観察してみよう
一個体または一群を月二回、三か月観察します。芽、葉、花、果実の段階と、見つけた生物や痕跡を同じ表に記録してください。見なかったことは「存在しない」ではなく「観察時間内には未確認」とします。
この章のまとめ
- 一度の観察は、植物の生活の一場面である
- 同じ個体を繰り返し見ると、生物季節を記録できる
- 訪れた生物、受粉、食害などの関係は、行動と痕跡から考える
- 同時に起きた現象を、すぐ因果関係として扱わない