植物の同定では、鮮明な写真一枚より、全体と細部、場所、日付、尺度がそろった一組の記録が役立ちます。後で図鑑や検索表と照合でき、他の人にも確認してもらえる形を目指します。
この章で学ぶこと
- 同定に役立つ写真の組み合わせ
- 日付、位置、尺度を残す理由
- 候補名と確定名を分ける方法
写真は関係が分かるように撮る
基本となる組み合わせは次のとおりです。
- 周囲の環境を含む写真
- 株全体の写真
- 葉が茎に付く位置
- 葉の表と裏
- 花の正面と側面
- 果実や種子
- 毛、棘、芽などの拡大
すべてがそろわなくても、撮影した部位が全体のどこにあるか分かるようにします。
大きさを後から推測できるようにする
写真では、小さな葉を大きく撮ることも、大きな葉を遠くから撮ることもできます。定規などを写すか、高さ、葉長、花径を記録します。手や硬貨は大まかな比較には使えますが、正確な尺度としては一定しません。
測定のために植物を曲げたり傷つけたりせず、安全に記録できる範囲で行います。
日付と位置は生活の情報になる
同じ場所でも季節によって地上部、花、果実の有無が変わります。観察日を残せば、生活環と再訪時期を考えられます。
位置情報は再観察に役立ちますが、個人の敷地や希少植物の生育地など、公開に適さない情報があります。自分の記録へ保存する精度と、他人へ共有する精度を分けます。
同定の確度を段階で示す
似た写真を見つけただけで確定とせず、次のように状態を分けます。
- 未同定:候補がない
- 科・属の候補:上位分類まで見当がつく
- 暫定同定:候補種があるが未確認特徴が残る
- 同定済み:必要な特徴を資料と照合した
- 要再確認:新しい情報と一致しない
同定者、使った資料、決め手となった特徴も記録します。
画像判定は候補を得る道具として使う
画像検索や植物判定アプリは、候補となる科、属、種を見つけるのに役立ちます。しかし、撮影角度、成長段階、地域によって候補が変わり、外見が似た別種を区別できないことがあります。
表示された名前を確定結果としてラベルへ移すのではなく、その候補について識別点、分布、開花期を資料で確認します。写真に写っていない特徴が必要なら、同定状態を暫定のまま残し、次の観察項目にします。
記録してみよう
一つの植物について、同定用の七種類の写真をそろえるつもりで撮影します。実際に撮れなかった部位を一覧にし、別の季節に再訪する理由として残してください。
この章のまとめ
- 同定記録は、環境、全体、器官、細部を一組にする
- 大きさ、日付、位置を残すと、比較と再訪ができる
- 位置情報の保存と公開は分けて判断する
- 候補名、暫定同定、同定済みを区別し、根拠を残す
- 画像判定は候補を得るために使い、識別点を資料と実物で確かめる