野外で植物を見つけると、すぐに名前を知りたくなります。しかし、名前が分からない状態は失敗ではありません。分類に必要な特徴を観察し、後から比較できる記述を残すことが、同定への第一歩です。
この章で学ぶこと
- 全体、器官、細部の順に記述すること
- 分からない特徴を推測で埋めないこと
- 一個体の特徴と種の特徴を分けること
仮の名前を付ける
名前が分からない植物には、「観察地点Aの白花1」「河川敷のロゼット2」のような仮番号を付けます。同じ個体の写真と記録をまとめるための識別子であり、分類名ではありません。
仮番号があれば、後で候補名が変わっても記録を失わずに済みます。
全体から細部へ記録する
まず草本か木本か、直立・つる・匍匐のどれか、高さや幅はどの程度かを記録します。次に、葉の付き方、茎、芽、花や果実の位置を見ます。最後に、葉の縁、毛、葉脈、花の部品など細部へ進みます。
接写だけを残すと、その器官が株のどこに付いていたか分からなくなります。全体像と細部を一組にします。
否定できる特徴も重要である
「毛がある」だけでなく、「葉表には毛があるが、葉裏には見られない」のように、どこにないかも記録します。乳液、香り、触感などは同定の手がかりになることがありますが、むやみに傷つけたり、未知の植物へ直接触れたりしません。
確認できない特徴は「なし」ではなく「未確認」とします。
一個体だけで決めない
虫害、踏圧、刈り込み、日陰などで、典型的でない姿になった個体があります。可能であれば同じ場所の複数個体を比べ、共通する特徴と、その個体だけの特徴を分けます。
花や果実がない時期には、種までの同定が難しい場合があります。無理に決めず、属や科の候補までに留め、別の季節に再訪します。
観察してみよう
名前を知らない植物を一つ選び、仮番号を付けます。全体形、茎、葉序、葉、花・果実、表面、周囲の環境の七項目を記録し、確認できなかった項目には「未確認」と書きます。
この章のまとめ
- 名前が分からなくても、観察と記録は始められる
- 仮番号で個体と記録を結びつける
- 全体、器官、細部の順に写真と記述を残す
- 確認できない特徴は、推測せず未確認とする
- 複数個体と別の季節を見て、典型的な特徴を確かめる