植物の姿や生活を理解するには、その植物がどこで、どのような条件のもとに生きてきたかを見る必要があります。ただし、「砂漠の植物だから水を必要としない」のように、自生地を一語で単純化すると誤解が生じます。
この章で学ぶこと
- 自生地と生育環境を分けて考えること
- 適応と順化の違い
- 自生地情報を栽培へ応用するときの注意
場所の名前だけでは環境を表せない
自生地とは、その植物が野生状態で生育する地域や場所です。しかし、同じ地域内にも、斜面、岩の割れ目、川辺、林床、樹上など異なる環境があります。気温や年間降水量が同じでも、日射、風、排水、土壌、水分の得方は大きく異なります。
植物を理解するときは、国名や気候区分だけでなく、実際に根がある場所と、その周囲の細かな条件を見る必要があります。この小さな範囲の環境を微環境と呼びます。
適応は世代を通した変化
ある環境で生存や繁殖に有利な遺伝的特徴が、世代を通して集団に広がることを適応といいます。厚い葉、発達した貯水組織、落葉する性質、特定の時期に開花する性質などは、環境との長い関係の中で進化してきた可能性があります。
適応は、個体が努力して身につけるものではありません。また、目に見える特徴がすべて現在の環境への適応とは限りません。祖先から受け継いだ制約や、別の機能に関係する特徴もあります。
順化は一個体の調整
一つの個体が、光や温度などの変化に応じて、生理状態やつくる葉の性質を変えることを順化といいます。弱い光で展開した葉と、強い光で展開した葉が異なることは、その例です。
順化には時間と限界があります。暗い室内にあった植物を急に強い直射光へ出すと、調整が追いつかず傷むことがあります。植物が耐えられる条件と、徐々に慣らせる範囲を分けて考えます。
自生地と栽培環境は同じではない
自生地情報は、栽培を考える重要な手がかりです。しかし、鉢の中では根が移動できず、用土の量も限られます。温室や室内では、光、風、夜温、雨の当たり方が野外と異なります。
自生地をそのまま再現しようとするのではなく、植物がそこで何を得ているかを考えます。短時間の激しい雨の後にすぐ乾くのか、霧から水分を得るのか、岩陰で直射を避けるのか。同じ「乾燥地」でも必要な管理は変わります。
観察してみよう
一株について、原産地域として知られている情報と、現在置かれている場所の条件を並べます。光、温度、水の得方、風、根を張れる範囲の五項目で、同じ点と違う点を書き出してください。
この章のまとめ
- 自生地の中にも、多様な微環境がある
- 適応は集団における世代を通した進化的変化である
- 順化は一個体が生きている間に行う調整である
- 自生地情報は、栽培レシピではなく植物の要求を考える手がかりになる