植物の一生は、種子から始まって種子で終わるとは限りません。胞子で増える植物もあり、地下茎や子株によって同じ個体が広がることもあります。植物がどのように成長し、世代をつなぐかを知ると、現在の姿を時間の中で理解できます。
この章で学ぶこと
- 成長点と植物の成長
- 有性生殖と栄養繁殖の違い
- 一年草、多年草、休眠などの生活のリズム
植物は成長点から体をつくり続ける
植物の茎や根の先端には、細胞分裂が盛んな分裂組織があります。茎の先端では新しい茎、葉、芽がつくられ、根の先端では根が伸びます。形成層を持つ植物では、茎や根が年々太くなります。
植物の体は、成長の途中で器官を付け足していくつくりです。そのため、葉の並びや枝分かれには、過去の成長が記録されています。古い傷、葉が落ちた跡、枝の切り替わりを読むと、その株がどのように育ったかを推測できます。
有性生殖は組み合わせを変える
有性生殖では、配偶子の融合によって次世代が生じます。被子植物では、花粉が雌しべの柱頭につく受粉の後、受精へ進み、種子が形成されます。
種子から育った個体は、親とまったく同じではありません。遺伝的な組み合わせが変わるため、兄弟にあたる実生の間にも違いが現れます。園芸で実生を楽しむ理由の一つは、この予測しきれない変異にあります。
植物には二つの世代が交互に現れる
植物の生活環では、胞子をつくる胞子体と、配偶子をつくる配偶体という世代が交互に現れます。これを世代交代といいます。遺伝情報のもととなる染色体を二組持つ胞子体で減数分裂が起こって胞子ができ、胞子から染色体を一組持つ配偶体が育ちます。配偶子が受精すると、次の胞子体が始まります。胞子は基本的に一つの細胞であり、胚や貯蔵物質などを含む種子とは異なります。
どちらの世代が目立つかは植物群によって異なります。コケ植物で普段目にする緑の体は主に配偶体、シダ植物で葉を広げる体は胞子体です。種子植物では胞子体が大きく、配偶体は花粉や胚珠の中で非常に小さくなっています。花、胞子、種子の違いを理解する土台になる考え方です。
栄養繁殖は体の一部から増える
植物は、茎、根、葉などから新しい個体を生じることがあります。子株、地下茎、むかご、挿し木、葉挿し、株分けなどがその例です。これを栄養繁殖と呼びます。
栄養繁殖で得られた個体は、原則として元の個体と非常に近い遺伝情報を持つクローンです。ただし、育つ環境や年齢が違えば見た目は変わります。また、成長点で生じた変異などにより、クローン内に違いが現れることもあります。
植物には生活の長さとリズムがある
発芽から開花、結実、枯死までを一年以内に終える植物を一年草、二年にまたがるものを二年草、複数年生きるものを多年草と呼びます。ただし、同じ種でも気候や栽培条件によって生活の見え方が変わる場合があります。
多年草の中には、厳しい季節に地上部を枯らすもの、葉を落とすもの、成長を弱めるものがあります。休眠は、単なる衰弱ではなく、不利な季節を越すための生活戦略です。栽培では、成長期と休止期を見分けることが重要になります。
世代を知ると現在の状態が分かる
幼い個体と成熟した個体では、葉の形や付き方が異なることがあります。花をつける大きさに達するまで何年もかかる植物もあります。現在の姿だけを見て種類や最終形を判断すると、誤ることがあります。
植物を見るときは、「何という植物か」に加えて、「一生のどの段階にいるか」を考えてみましょう。
観察してみよう
身近な植物について、発芽、葉の展開、開花、結実、落葉、休眠のうち確認できる段階を書き出します。一年を通した姿が分からなければ、これから観察したい時期を記録してください。
この章のまとめ
- 植物は成長点から新しい器官をつくり続ける
- 有性生殖では次世代に新しい遺伝的組み合わせが生まれる
- 植物の生活環では、胞子体と配偶体が交互に現れる
- 栄養繁殖では元の個体に近いクローンが生じる
- 現在の姿は、生活環の一場面として理解する必要がある